Intoxicated Lotus
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 あら。あなた、大晦日の今日も来てくれたのね、ありがとう。『#BitchVogue』編集長のゆずひめよ。年末はいかがお過ごしかしら。
 さて、『#BitchVogue Awards 2015』もいよいよ終わり……楽しんでいただけたかしら? 最初にして最後である今年、2部門を受賞したMadonnaがMVPに輝くという結果になったわ。Madonna、おめでとう。近々また糞リプ送るわ。
 ところでこのアワード、Single, Album & Artist Of The Yearは各1点、Madness Of The Yearは3点、全部門予想参加で1点の合計10点満点で、4点以上を獲得したら一人前のディーヴァとしてこの私が認定するの。3点以下はこれからが期待されるAriana Grande相当、4点~6点はRihanna・Katy Perry・Lady GaGa相当、7点~9点はBritney Spears・Christina Aguilera・Beyonce相当、10点満点でMariah Carey・Jennifer Lopez相当のディーヴァなんだけど、Madonna、Cher、Barbra Streisand辺りはもはや伝説だから、いくら今回満点を取っていたところでそれは叶わないわ。ごめんなさいね。


 自分に正直な私が編集長を務める『#BitchVogue』の読者層が、自分の獲得ポイントを正直に自己申告するような人たちで本当に誇りに思う。満点がひとりもいないのが愛おしいわ……目標のディーヴァに達したみんなはおめでとう、達せなかったみんなは今後も励んで? それじゃあ、MVPのMadonnaを挟んで総括といくわね。



 今年は、音楽と自分との距離について、こう見えて(見えてないけど)結構悩んでいたの……正直、ここ最近の(特に日本の)音楽業界は、あまり好きではないわ。今回のノミネートを見ていただいたらわかる通り、男性・女性ともにヴォーカルがひとりのアーティスト・バンドばかりだったと思う。それはもともと私がavexやSONYのディーヴァ、元EMIのSSWといった女性ソロが好きだから……っていうのもあるんだけど、最近のソロは似たような小粒揃いだし、何より最近はグループやサブカル・バンドがちょっと多すぎやしないかしら……ジャニーズ、AKB、EXILE系列ですでにお腹いっぱいなのに、最近は他にもグループが大量に生産されているわ。ねえavex、アンタたちってわかりやすい典型的なディーヴァを刺客として放つ会社じゃなかったの? 最近アンタたちがデビューさせてるのって、なんだか無味無臭で全然面白くないわ? まあ今は孤高の存在より親しみやすくて繋がりやすい存在が支持される時代なんでしょうね……それにしたって過飽和だし、シングル部門でも触れた通り、たいして興味が持てないうちはどれも同じに見え・聞こえるし、そもそもこれだけ多いと興味を持とうという気持ちすら起きないのよね……そりゃ数撃ちゃ当たるだろうし、1人でも推しがいれば作品を買ってくれるだろうという考え方も商売としては理解できるわ。そうでもしないとCDが売れないんでしょうねもはや……だけどそれって音楽業界が音楽を売ることを諦めてるわよね、最近は以前よりも「CDが売れなくなった」という声を聞くようになったけど、だったらyou better work bitchって感じよ。マッドネス部門でもチラッと触れたけど、私みたいな音楽オタクは例外で、大多数の消費者って正直なもので、その曲が良くなかったらあっさり買わないという選択をする(というか買うという選択肢がない)し、その結果、ダイレクトに売上に響くと思うの。それを配信やストリーミングが主流になってきたからと時代のせいにしたり(供給側が一番やっちゃいけないことよ)、見当外れの反省ではなく、きちんと戦略は練られていたか、今回の曲はいい曲だったか、パッケージとして買うメリットが存在したか、もっといろいろ考えて、すべての手を尽くし切って、どうしようもなくなってはじめて「売れない」と愚痴ってほしいわ。買う人はちゃんと買ってるし、そういう愚痴って、ちゃんと買ってる消費者にたいしてものすごく失礼。ハッキリ言って、最近の音楽業界は消費者に責任を丸投げし、なすりつけてるパターンがすっごく多い気がするのよね。しまいには単純に好きな曲がなくて音楽を聴かなくなった消費者に「探せばいい音楽はいっぱいある」ですって? そりゃそうよ。だけどその前に、「いい音楽」が「探さなければ見つからない状態」って、音楽業界として果たして正常なのかしら。消費者は好きな音楽を自ら見つけ・掘り下げてくれるもの、と頼りきってる感じがするけど、さっきも言った通り、消費者全員が私みたいな音楽オタクだとは限らないのよ。そうやって音楽業界が甘えた結果、大衆向けとして残るのは懐メロ回顧番組ばかり……なんでもかんでも先人頼みになって、その結果「先人アーティストはすごい=現代のアーティストは及ばない」という負の図式が加速化し、どんどん現代の音楽は尻すぼみになっていく……何より、シングル部門でも触れたけど、今の音楽業界で新しいことに挑戦してるのって、ハッキリ言って先人のほうが多いのよ。先人のほうがハングリーじゃお先真っ暗。正直自業自得よね、音楽業界が音楽を売る気がないんだもの。それを私たち消費者の責任にするもんだから、始末が悪いったらありゃしない。私はそんな音楽業界の責任を消費者として負う気なんてさらさらないし、そんなことするくらいなら、好きな曲だけ聴いていられれば幸せよ。基本的に音楽ってこういうスタンスで接するものだってこと、最近忘れがちになっちゃってたわ。期待の(できるかできないかわからない)新人を発掘したり、もはや音楽の指標として機能していないチャートを追って流行をチェックしたり、別に音楽業界に携わってるわけでもないし、プロ消費者になる気なんかさらさらないのに、なんだかここ数年いろいろ無駄にしちゃってたなって、ふと我に返ったの。BitchのVogueは短い、だったら好きなものだけに人生を費やしていたい――その基本理念を、編集長の私自らが見失っちゃってたのね、そりゃ即廃刊するわよ。それでも伝説の雑誌として支持してくれる人がたくさんいて、私は本当に恵まれてるなって思う1年でもあったわ。みんなには本当に感謝してる。みんながあってこその『#BitchVogue』よ。
 なんだか邦楽について語っちゃったけど、洋楽についてもほぼ同じよ。最近特に顕著な「何かが流行ったら猫も杓子も右に倣え」な感じが本当に苦手。そりゃそれが商業としては安牌だけど、あなたが本当にやりたい音楽ってBeyonceのフォロワーみたいな音楽だったんだ、みたいな。ガッカリすることが多くなったわ。そしてそれが流行なものだから、チャートの上位には似たような曲がズラ~リ。さっきも言った通り、たいして興味がないうちは違いを見つける気すら起きなくて、もう辟易。チャート上位の曲、音楽雑誌が高く評価した作品――これらが自分の「好き」とイコールかどうかはまったく別の話だし、「いい」とは思っても「好き」であるかはまた別の話。そのうえ「いい」も「好き」も人によって千差万別なものだからしょうがない話なんだけど、ここ数年チャートや音楽雑誌でよく見かける作品がことごとく私の好みじゃなくて全然ついていけず、洋楽に対する情熱が消えかけてるのが正直な今の私よ。例えばライバル誌が「これがこの時代の音だ」と宣言したところで「へぇ、あぁ、そう」って感じだし、それと同時に「随分と御大層な御身分だこと」とも思うわ。レコード会社と裏で金銭のやり取りでもやってそうなライバル誌の編集者たちの「流行に疎い素人のために最先端の素晴らしい音楽を紹介してやっている意識の高い我々」みたいなスタンスが私は本当に大っ嫌いで、だからこそそれに対抗して好きな音楽をただ消費するだけの『#BitchVogue』を創刊したくらいよ。その極めつけが、去年Estelleが出した「Conqueror」だったわ。このどいつもこいつも最先端を気取って逆に没個性に陥っている時代に、5~6年前に流行ったようなストレートなパワー・ミッドを持ってきた。メロディも美しいし、本当に久しぶりに名曲と呼べる曲に出会えたな、といった気分で新鮮な感動を味わったわ。こういう曲こそ『#BitchVogue』で取り上げる音楽だってね。そんな私が今でも唯一信頼している音楽メディアは何かと訊かれれば、BBC Sound Ofシリーズね。あとは知らないし、別に知る必要だってない。どうだっていいわ。
 そして音楽全体に目を向けると、消費者は「好き」と「嫌い」で生きているはずなのに、最近はパッと見同じアーティストやグループやバンドが多いために、パッと見は同じなのに敢えてそのアーティスト・グループ・バンドを選んだ理由を説明しなければ伝わりづらい時代になってきたと思う。しかもだいたいの場合、没個性で売上もどんぐりの背比べ状態。そのなかから特筆すべき点を取り上げなければならない。だったら私はもう何も語りたくない、めんどくさい。もう疲れてしまったの……以前は名前を出すだけでおおかた察せるような、輪郭のしっかりした象徴的なアーティストが多かったでしょ。今は逆に、複数の似たり寄ったりなアーティストが集まってひとつの輪郭をぼんやりと形成してるみたいなイメージ。だから一生懸命違いを語るのも、語っている人を見るのも、好きなものを好きだと語っているだけなのに、なんてつらいことなんだろう、こんなの悲劇だわって思ってしまうの。先人がいる限り、次に出てくる人たちはどうしても比較されちゃうし、そこは不憫だとは思うんだけど、それを知ったうえで同じステージに立っているのなら、先人を食うくらいの勢いで頑張ってくれないと、いつまで経っても一緒くたのまま……こういう現状だと全部買うか全部スルーするかのどちらかになってきて、だけど全部買うとなるとコンプなんて一生できやしないし、だったら、と思った瞬間、いろいろと諦めが出てきたの。何もかもが中途半端。ああ、私って結局、音楽誌の編集長という一丁前の皮をかぶって偉そうにしておきながら、結局は好きな曲以外には興味のない普通の消費者で、そのくせ背伸びをしていただけなんだってね。正直言って、音楽を純粋に楽しめていた時期は2012年まで。それ以降は下降線で、最近ではむしろ苦痛すら感じはじめてきた感じ。そもそもこのブログを2013年に立ち上げたのも、2012年以前のアルバムの感想を書いて、自分用の回顧録を作りたいという、未来は一切意識していない理由だった……それゆえブログに取り上げたいと思える作品も減ってきて、最近は毎月の更新も困難になってきていたし、私も自分を見失っていたしで、そろそろ本当にやめどきね、と悟ったの。アルバム部門で頭でっかちになって純粋に音楽を楽しむ気持ちを失いかけていると言ったけど、音楽のことは絶対に嫌いにはなりたくないから、音楽との向き合い方を考え直すためにも、今年大好きだった作品やアーティストをひとしきり紹介し終わった今、ここらで区切りをつけて、宣言通りこの記事でブログの更新と『#BitchVogue』を終わりにしたいと思う。音楽は私を天国に連れて行ってくれる存在だし、こうやってどん底にも突き落とすときもある。今日ですべてを終わらせたたった今から、私は地に足をつけた普通の消費者として前に進むわ。音楽に愛を持って生きていれば、きっとまた高みへ昇ることができる――私はそう信じてる。

 最後の最後に毒だらけで自分でもちょっとどうかと思うんだけど、今年の毒を来年まで持ち越したくないし、本心を書かないなら書く意味も存在する意味もない。まあ最後だし、と免罪符をつけて、全部吐き出させてもらっちゃったわ。Rebel Heartな編集長でごめんなさいね。まあそんなこんなで、なんだかんだと2年半続いたこのブログ『Intoxicated Lotus』ならびに『#BitchVogue』だけど、最後まで付き合ってくださったあなたたち全員に、これまでのご愛顧本当にありがとうございましたとお礼が言いたいわ。このブログで紹介した作品やアーティストには本当に思い入れがあるし、このブログを通していろんな思い出だって生まれた。2年半って案外短いもんだけど、私は短い曲ほどたくさん聴いてしまうタイプで、このブログにもそういう存在であってほしいわ。不完全な私というビッチの、ちょっとしたメモワール……かけがえのない宝物よ。そんな私の宝物に一度でも触れてくれた、今まさにこの文章を読んでいるそこのあなた……私のSpecial Thanksを何度だって捧げるわ。どうぞ、明日から素敵な1年があなたに訪れますよう。そしてどうぞ、あなたの素敵な音楽ライフが100年続きますよう……それでは、さようなら。ゆずひめより、愛を込めて。


 15/12/31
 fin.
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Japanese Artist Of The Year


・安室奈美恵
・大森靖子
・椎名林檎
・JUJU

 読者による受賞予想はコチラ。

 受賞したのは



大森靖子

 やれるうちにやれること、全部やっちまうわ。

 どんなにアルバム『_genic』が素晴らしくても、シングル「Red Carpet」があまり好きになれなかった安室奈美恵。もはや私のなかで殿堂入りを果たし、シングル3曲と配信1曲と提供2曲と安定した供給をしてくれるも、そのどれにも感情を突き動かされることがなかった(しかし聴きまくった)椎名林檎。「PLAYBACK」で初結成されたJUJU×UTA×為岡そのみのタッグが「What You Want」で早くも黄金タッグ化し革命を果たすも、相変わらずミッドやバラードも歌っていてあと一歩振り切れなかったJUJU。
 メジャー1stアルバム『洗脳』がアルバム部門に、そのあとのシングル「マジックミラー / さっちゃんのセクシーカレー」がシングル部門にノミネートされ、バンド名義で発表したアルバム『トカレフ』のクオリティも高かった大森靖子の受賞である。《メンタル-100の状態から0する音楽ではなく、-100から-99にする音楽》をモットーに、《メジャーでしかできないことをできるだけやりたい》と精力的に活動し、数々の上質なメロディと心揺さぶる歌詞、感情むき出しの歌声を届けてくれた彼女。来年早々に放たれる次なるシングルは亀田誠治と初タッグということで、初期の椎名林檎のような化学反応が起こることを、今から待ちきれない。


English Artist Of The Year


・Janet Jackson
・Madonna
・The Weeknd
・Years & Years

 読者による受賞予想はコチラ。

 受賞したのは



Madonna

 ビッチ、私がマドンナ。

 アルバム『Unbreakable』で見事全米1位を獲得し、シーンに華麗なる復帰を果たし、自身が不滅のR&Bアイコンであることを証明したJanet Jackson。アルバム『Beauty Behind The Madness』が同じく見事全米1位を獲得し、シーンに旋風を巻き起こし、自身が新たなキング・アイコンになることを宣言したThe Weeknd。シングル・アルバムともにノミネートこそ果たさなかったものの高水準のシングルと高水準の1stアルバム『Communion』を発表し、平均化させるとノミネートに至ったという、まるで隣りにいるのが当たり前の幼馴染みのようにいつの間にか私の懐に入り込んでいたオリたそことOlly Alexander率いるYears & Years。
 証明せずとも、宣言せずとも、親しみやすさ皆無でも、誰もが揺るぎないIconicなクイーン・オブ・ポップ(=絶対女王)であると認めているMadonnaの受賞である。彼女のアルバム『Rebel Heart』は、意外と雑多な内容でアルバム部門のノミネートこそ逃したものの、再生回数は断トツで今年1位であった。そして突然のパリの惨劇の際にスピーチをしたとき、彼女が絶対女王である理由を再確認した。真のオピニオン・リーダーとは、普段はトンチキでキテレツな行動を取っていようと、〆るときにビシっと〆られる人間だ。普段からキーキー権利を主張するような小者たちとはまったくもって、格が違う。彼女が《(今回のパリの惨劇が起きたからといって)楽しむことを忘れてしまってはヤツらの思うツボだ》と発言し、「Like A Prayer」を披露しただけで、今年起きたすべてはこれ以上の意味をなさないものとなった。それほどの行動力、影響力、そして音楽。彼女が『Rebel Heart』の持ち主であるということは、すなわち圧倒的に深い愛の持ち主であるということだ。それらをすべて包括したアルバムを発表し、その通りの活動を行った彼女以外に、この賞を捧げられるアーティストはいない。普段のトンチキでキテレツな行動も含めて、私はやっぱり、こんなにも愛情深い絶対女王のことが、本当に大好きだ。


 15/12/29


Madness Of The Year


・Bonnie McKee「Bombastic
・Demi Lovato「Confident
・J Sutta「Feliine Resurrection
・MAX「#SELFIE -ONNA Now-

 読者による受賞予想はコチラ。

 受賞したのは



J Sutta「Feline Ressurection」


 本当の狂気は、理解しようとすると気が狂い、脳が猫レベルに萎縮する。ミヤ~オ。

 元々はSingle, Album & Artist Of The Yearのみだったこの『#BitchVogue Awards 2015』にふとした思いつきで箸休めとして急遽追加したのが今回のMadness Of The Yearであるが、実は、最も反響があったのがこの部門である。Christina AguileraとCherが主演を務めた映画『Burlesque』でCher演じるTessが「You Haven't Seen The Last Of Me」を歌唱するシーンが最後に追加され、結果それがゴールデングローブに輝いたことが記憶に新しいが、この『#BitchVogue Awards 2015』にもその法則が作用したようだ。つまりはこの部門こそが核であり、それゆえ今回の読者投票は一番の激戦区で、発表前からまさに狂気的な波乱を起こしていた。
 さて、まずはBonnie McKeeの「Bombastic」であるが、彼女は虎の目の持ち主Katy Perryのヒット曲の大半を手掛けるヒットメーカーであり、実は10年ほど前にアルバムを一枚出していたりする。そんな彼女が本格始動と言わんばかりにリリースしたのが、タイトル通りボンバスティックなこの「Bombastic」だ。まさにボンバスティックな曲展開、Olivia Newton-JohnのフィットネスやKaty Perryの乳花火、Miley Cyrusのトゥワークをはじめとするポップ史に残るすべてのコンテンツをぶち込んでもはやしっちゃかめっちゃなMVといい、名は体を表すとは言ったもので、この曲に関しては私はボンバスティック以外の感想が思い浮かばない。新進気鋭のSSWであるCharlie Puthが共作しているという恐ろしすぎる事実まで含めて、まさに狂気である。私の母はこう言った、「トンチキ」だと。
 続いてDemi Lovatoの5thアルバム『Confident』の表題曲にして幕開けを飾るボッシーな曲「Confident」である。《生まれ変わったワタシはボッシー・ボスよ》と言わんばかりの大仰な曲、気合いの入りまくった気張り歌唱、《自信に満ちてて何が悪いの?》という歌詞、幼稚園児でも先が読める展開のMV、そしてこの曲とシングル部門にノミネートされた2曲目「Cool For The Summer」以外出来がひどかったアルバム、そのすべてに狂気がギンギン漲っている。私の母はこう言った、「アクションがドン臭すぎる」と。
 さて、デビュー20執念――おっと、20周年を迎えた我らがMAXが、日本から唯一のノミネートである。彼女たちはSugababesがいなくなった今、なくてはならない存在。そんな彼女たちが「Tacata'」「情熱のZUMBA」という神アンセムに続いて放ったのが、The Chainsmokersの「#SELFIE」の日本語ヴァージョンである、この「#SELFIE -ONNA Now-」である。まず、セリフとキメのフレーズしか存在しないこの曲を日本語でカヴァーしようと思ったのが狂気であるし、ヒャダインによるアゲな歌詞とプロダクションの絶妙さがこれまた狂気であるし、中盤のセリフのやり取りが完コピしてしまいたくなるほどの狂気であるし、どんどんヤバくなっていくMVもやはり狂気であるし、もはや自撮りなど関係なくONNA最高という結論に至っているのが一番の狂気である。私の母はこう言った、「出た、MAX」と。そんな狂気だらけの彼女たちが私が住む長崎を訪れ、思案橋横丁やチンチン電車というありきたりな風景をステージにし、この夏を熱くした――果たしてこれ以上の幸せが存在するであろうか。いや、ない。ベスト・アルバムにはSerebroの「Mi Mi Mi」のカヴァーを収録し、《どうせやるなら振り切れないと》と自らのマッドネスっぷりをメタで自覚しつつも敢えてやっている攻めのスタイル、まさにジャパニーズ狂気。本当であるならば彼女たちが受賞したはずだった。しかし、よくよく考えてみてほしい。ここまでの3組は、本当はまともなアーティストが計算の上で敢えて外して来ている(Demi Lovatoからは多少のガチを感じる)だけだ。何が起こるかわからないこのクレイジーな世界には、ダーク・ホースが確かに存在した。
 彼女の名は、J Sutta。グラミー賞を受賞したガールズ・グループThe Pussycat Dolls(以下PCD)の元メンバーである。ヴォーカルの95%を不動のセンターNicole Scherzingerが歌い、他のメンバーはほぼバック・ダンサー状態だったPCD。ちなみに、冒頭で触れた『Burlesque』の監督Steve AntinはPCDを作ったRobin Antinの兄であり、彼自身もPCDに関与していたという狂気的偶然については、カオス極まりないことになりそうなので、今回はスルーの方向で進めていく。話が逸れたが、彼女はNicole ScherzingerとRobin Antinの独裁状態だったPCDを卒業したあと、『Burlesque』公開と同時期にあのWilla Fordの大ヒット曲「I Wanna Be Bad」とまったく同じタイトルの曲でJessica Suttaとしてソロ・デビューを果たした。そのあとHollywood Recordsから発表した2011年の「Show Me」がヒットの兆しを見せ、当時旬だったRedOneとアルバムを制作をしていたが頓挫(彼女曰く「曲が糞だった」とのこと)、何度かの移籍を繰り返すなかで「Candy」という曲でセクシー路線に走ったりと試行錯誤し、今年、Premier Leagueというインディペンデント・レーベルから、名前をJ Suttaに改め心機一転放ったのが、今回の「Feline Ressurection」である。ジャケットにもある通り《虎誕生》を意味するこの曲には、Robin Antinの呪縛から抜け出しソロとして自立するというメッセージが込められている。ノイジーでエッジーでロッキッシュなダンス・サウンドに乗せて本能をむき出しにラップを披露し、フックで《カワイイ猫ちゃんたちにさよなら、ミヤ~オ/このビッチは威嚇することを覚えたの/もう誰にも止められない/私がこのジャングルの女王よ》と高らかに宣言する歌詞は、彼女がpussycatからtigerに進化したことを意味している。その証拠に、この曲のMVではpussycat時代の彼女がRobin Antin似の女優に虐げられ、そのあと覚醒してキメラたちを従え、遂にRobin Antinと対峙し、自分の手は汚さずキメラたちに《Fuck her up! [やっちまいな!]》と退治させ、自分は颯爽とキャット・ウォークで去っていくという展開がセンセーショナルに描かれている。念のため、Robin Antinの画像を添付しておこう。



 さあ、pussycatからtigerへと進化した彼女が、虎の目を持つKaty Perryなどがいるディーヴァ界でこれからどう闘っていくのか――Nicole Scherzingerは言った、「メンバーを愛してるし、彼女たちの成功を祈っているわ」。そして私の母は言った、「意味のわからん」。そう、意味がわからない。ここまで真面目に語っておいてなんだが、ここまで真面目に語っていること自体が狂気に感じられるほどの狂気っぷりであることがご理解いただけただろうか。実は、その分野に明るくない素人の意見こそが、真理を突いていることがある。先ほどから昭和歌謡にしか興味がない私の母の発言を挟んでいるのは、それが理由である。他の曲に関してはツッコミを入れているが、この曲に関しては意味がわからないと言った。私にも意味がわからない。これがMadness Of The Yearでないと言うのなら、いったいなんだと言うのだろうか。ちなみにこの曲について、彼女は《あなたはありのままで完璧な存在、誰にも否定させてはダメよ》というメッセージが込められていると発言している。つまり本人はいたって真面目にやっているというのが、一番の狂気である。そして普通、こういう攻めた曲で来たならどんどん攻めてくるものだが、1stアルバム『Sutta Pop』改め『Feline Ressurection』から次にカットされたのは、Sophie B. Hawkinsの1992年のヒット曲「Damn I Wish I Was Your Lover」のカヴァー(こちらのMVもなかなかである)であった。《彼女は歌えない》と散々ディスられたことに対する回答としてこちらの張り上げエモーショナル・ミッドをカヴァーしようと真面目に考えたのだろうが、狂気である。そんな彼女の狂気に満ちたアルバム『Feline Ressurection』は、間もなく発売"予定"である。


 15/12/27


Japanese Album Of The Year


・安室奈美恵『_genic』
・大塚愛『LOVE TRiCKY』
・大森靖子『洗脳』
・藤井隆『Coffee Bar Cowboy』

 読者による受賞予想はコチラ。

 受賞したのは



安室奈美恵『_genic』


 飼い馴らすくらいなら、暴れさせなさい。

 シングル部門に引き続きノミネートされた大森靖子のメジャー1stアルバム『洗脳』は、再生回数という観点から言えば文句なしの年間1位だった。ポップからロック、テクノ、ルーツである弾き語りまで、ときに狂おしく、そしてときに愛らしくその表情・サウンド・声音が変幻自在にコロコロ変わるさまは、とても楽しく、それでいてどうしようもなくセンチメンタルで、そういえば音楽って元来こういうものだったよな、小難しく考えるようなもんじゃなかったよな、と改めて気づかされた。タイトルの意味を相手を支配する意味ではなく《脳みそを洗う》という意味でつけたというエピソードも素晴らしい。いつの間にか余計な知識で垢にまみれていた私の脳はまっさらになり、ただただ楽しく、ただただおセンチになれる、私にとって今年を代表する1枚だった。
 さて、シングル部門で大森靖子を《かつての大塚愛のむき出しヴァージョンのよう》と表現したが、その大塚愛の現代ヴァージョンこそが、今回の『LOVE TRiCKY』である。かつてのヒット曲をディーヴァお得意の《私のやりたい音楽ではなかった》発言で一蹴し、《カップリングやアルバム曲でこっそりやっていた音楽をメインに据えたアルバムをようやく作ることができた》ということで、本作は非常にエレクトロニカでダンサブル、そしてオルタナティヴな1枚に仕上がっている。そんななかにもボサノヴァ、サイケデリック、セクシー、キュートさが共存していて、そこからはかつてのカラフルな彼女を垣間見ることもできて、まったくの別人になったというわけではなく、あくまで進化系であることが窺える。そして、全体的にクールなトーンで統一されているが、1万人の心臓の音を集めて制作された「end and and -10,000 hearts-」をラストに据えていることからもわかる通り、実は温かみのあるアルバムに仕上がっている。まさに摩訶不思議な体験ができるアルバムで、やはり、一見エキセントリックで実はキャッチーな大森靖子は、彼女と同じタイプであるという個人的印象がより強まった。
 同じクールなダンス・アルバムという括りでは、藤井隆の久方ぶりとなる『Coffee Bar Cowboy』も同じである。ダンス・アルバムというよりはディスコ・アルバムといった趣で、彼のダンス・ミュージックへの愛を思う存分に堪能できる1枚に仕上がっているのだが、そこはやはり藤井隆といったところで、絶妙な塩梅で狂気が入り混じっている。メランコリックで、アイドルで、チルで、コケティッシュで、スムースで、スペーシーで、ファンキー。そんな曲調の曲が、彼の無機質でどこかロボットのようなヴォーカルでまとめられ、全体的に冷ややかで硬質な雰囲気を醸し出している。彼のヴォーカルが無機質でどこかロボットのように思えるのは、彼があまりに真面目でストイックだからかもしれない。しかし、それが狂気として表出してこの作品に妖しいアクセントを加え、こんなにも素晴らしいアルバムに仕上がっているのだと思う。まさに、天然で天性のものを持っているアーティストなのだろう。
 さて、無機質でロボットのようなヴォーカル日本代表といえば、我らが安室奈美恵である。彼女のサイボーグのようなヴォーカルとダンス・ミュージックの相性は最高で、とりわけバキバキのサウンドであればあるほどその歌声は映えるように思う。そんな高カロリーのダンス・ミュージックが結集したのが、今回の『_genic』である。シングル部門を制覇したJUJUと同じくいつにも増して挑発的な歌詞が増え、こちらを煽り、否応なしに踊らせる。ファンキーに、ダサいくらいのEDMサウンドに、近未来サウンド。それらで踊り明かしたあと、バラードで瞳にうっすら涙を浮かべる。まさに業深い人間の夜明けといった感じのアルバムで、業深い人間代表の私としては、このアルバムを聴き倒さざるを得ない。純粋無垢な大森靖子は最高じゃない、クールでおしゃれな大塚愛や藤井隆も最高じゃない、だけどそんなこと忘れるくらい遺伝子レベルで暴れなさいよ、この安室奈美恵で――最高に踊れて、泣けて、まっさらな明日を迎えられるこの作品が、今年の受賞作品である。


English Album Of The Year


・Carly Rae Jepsen『E・MO・TION』
・Ellie Goulding『Delirium』
・Janet Jackson『Unbreakable』
・The Weeknd『Beauty Behind The Madness』

 読者による受賞予想はコチラ。

 受賞したのは



The Weeknd『Beauty Behind The Madness』


 すべての狂気は美に通ず。

 正直、シングル部門に「I Really Like You」をノミネートさせることを最後まで迷っていた。三十路間近になって《本当に好きだけど、この気持ちが恋なのかまだわからない》というティーンのような狂気的歌詞を爽やかでバブルガム・ポップなアッパー80'sサウンドに乗せてキャッチーに歌うさまは、まさにノミネートに相応しかった。しかし、それと同じくらいこの工藤静香の「MUGO・ん…色っぽい」のようなタイトルのアルバム『E・MO・TION』が素晴らしかった。Demi Lovatoのアルバムはひどかったし、MadonnaはMadonnaだし、Mariah Careyはベスト・アルバムだし、シングル以外に適切な居場所が見つからなかった。しかしCarlyにはアルバム部門があるじゃない、ということで今回のノミネートに至った。彼女が《往年のCyndi Lauperのようなアルバムを作りたかった》と語る通り、80'sサウンドへの愛とリスペクトを感じるこのアルバムは、そのまま80'sサウンドへの愛とリスペクトに満ちた充実の内容で、本人が目指した《いつの時代に聴いてもギャップを感じないアルバム》にしっかりと仕上がっている。いくら先行シングルの歌詞がティーンであっても、中身は三十路のしっかりとした音楽家。商業と自分のやりたいことを両立させている、実は全然キュートなどではない(顔もね)、芯のあるタフで情熱的なアーティストなのだ。その情熱がユーミンのごとく女の情念となって表出したのが、この『E・MO・TION』なのである。
 さて、私はEllie Gouldingの元ファンだ。One DirectionのNiall Horanとセックスするまでは、自らを《エリゴル王国の民》とまで名乗っていた。しかし、彼女がOne Directionで私が一番応援していたNiall Horanとセックスした瞬間、私のなかで彼女が忌み嫌う存在となった。そんな彼女が放った3rdアルバム『Delirium』は、こんちくしょう、素晴らしい作品だ。去年はTaylor Swiftの『1989』がポップ・アルバムとして素晴らしい出来だったが、今年そのポジションについたのはthis bitchだ。カントリーからポップに路線を変更したTaylorと同様、フォークトロニカからポップに路線を変更したthis bitchも、見事に傑作を作り上げた。それでもどこか民族的であったり、トラップ調であったり、トロピカルであったり、バブルガム・ポップであったり、ヒーリング・ミュージックであったり、壮大であったり、ひと口にポップとは言えど一筋縄ではいかない感じも、彼女の出自を感じることができて素晴らしい。SSWが路線を変更すると失敗する例が多いが、Taylorとthis bitchは見事に自らの新たな可能性を示し、引き出しの多さをアピールすることに成功した。また、同期と言えるMarina & The Diamondsが『Froot』で禍々しさと生々しさの共存を表現し、Florence + The Machineが『How Big, Bow Blue, How Beautiful』で映像的で教会のような荘厳なアートを表現し、UKのSSW一騎打ちと思われた争いを自身はポップ化で差別化を図ってねじ伏せた。そこは素直に賞賛すべきことだし、この三者の音楽は本当に素晴らしいのだが、残念なことに、私はTaylorもthis bitchも忌み嫌っている。それでも彼女たちの作る音楽に惹かれてしまう私を嘲笑うかのように、Adeleは最新のインタヴューでこう語った。《たとえ作る音楽が素晴らしかろうが、嫌いなアーティストの音楽は聴かないし、家で流したくないの》――メンタルが強すぎる。
 さあ、話は変わって、今年はJanet Jackson復活の年であった。よりよい作品を作るために延期が繰り返され、誰もが何年も待ち焦がれた彼女のアルバムは、なんと黄金タッグJam & Lewis全面プロデュース作品。否応なしに高まる期待を裏切ることなく、むしろそれを超える作品を出してきた彼女は、自らがunbreakableなアイコンであることをアルバム1枚で証明した。テンションが最高潮に高まる冒頭のセリフ、曲の終盤で展開が変わりアルバムに流れを持たせる手法、アップとミッドでしっかり流れができている展開、やりたいことをひとしきりやったら最後の曲で楽しませる。まさにper-fect。私のQueen Of R&Bはまさに彼女である。
 それでは、King Of R&Bは誰なのか。そう問われると、返答に困ってしまう。例えばD'Angeloは神様だと言われているし、最新アルバムも孤高の存在だったけれど、リアルタイムで活躍を知らない私には、いまいち感覚がわからない。いつかLily Allenだか誰だかが言っていた《アラサーにとってのアイコンはMadonnaじゃなくてBritney Spears》という発言が私にはとてもしっくりくる。King Of PopのMichael Jacksonでさえ、私はリアルタイムでの活躍を知らない。MadonnaやJanet Jacksonは今でも活躍しているからしっくりくるが、彼らには《昔すごかった人/偉大なことを成し遂げた人》というイメージしか持つことができない。そんな私にとって、新世代のKingとして相応しいのは、このThe Weekndのような気がしている。新時代のKingとして、Michaelをリスペクトした「Can't Feel My Face」でポップの部分を、元来やっているPBR&B路線の「The Hills」でR&Bの部分を、それぞれ全米1位を獲得して、どちらも網羅している。ノイジーで、クラシカルで、オールド・スクールで、ロッキッシュで、キャバレーで、レトロで、オルタナティヴで、耽美で、荘厳。Ed SheeranやLana Del Reyといった濃いSSWを客演に迎えても、ほとんど気づかせないくらいのThe Weeknd自身が持つオーラ。まさにイメージ通り。というか、イメージ戦略通りのアルバム。自らを今作を持って大スターに仕立てあげたい彼の戦略と、アルバムの内容とが、見事に合致している。だからこそ、彼はまだ浅いキャリアでこんなにも(私含め)ガチなファンを獲得しているのではないだろうか。そしてこのタイトルである。《狂気に隠れた美》を意味するこのタイトルは、今回のCarly Rae Jepsenの情念に隠れた80'sサウンドの美、Ellie Gouldingのポップ・サウンドに隠れたルーツの美、Janet Jacksonの不滅さに隠れた生身の人間の試行錯誤の美といったテーマを、すべてを包括したようなタイトルである。そんなタイトルをつけてしまうセンス、そしてダークで宗教的で狂気的な世界観に狂おしいほどの美しさが隠れたアルバムの内容が今回の受賞に相応しいことは、もはや言うまでもない。


 15/12/25


Japanese Single Of The Year


・大森靖子「マジックミラー
・Galileo Galilei「恋の寿命
・JUJU「PLAYBACK
・中森明菜「Rojo -Tierra-

 読者による受賞予想はコチラ。

 受賞したのは



JUJU「PLAYBACK」


 泣かせてよ、そうじゃないなら突き動かして。

 私にとって、ロックは泣くための音楽である。むき出しの感情に共鳴して、弾けもしないギターを掻き鳴らしたい衝動に駆られるための音楽。そんな私にとって、椎名林檎はまさしく崇拝する対象。そんな彼女が今年発表した「至上の人生」「長く短い祭」「神様、仏様」が今回何ひとつとしてノミネートされなかったのは、恐らく読者の方々にとっても驚きではなかっただろうか。しかしその理由は単純で、今年の彼女の音楽には、去年の名曲「NIPPON」に見られる《計算している暇さえないほどの感情の迸り》が見られなかったからである。もちろん今年発表した3曲はどれも大好きであるし、再生回数だけで言えば今回ノミネートされた4曲にトリプルスコアで勝っている。それでもノミネートを逃してしまうくらいに、私にとってロックの泣きの要素はトップ・プライオリティなのだ。そんな私を今年救ったのが、大森靖子の「マジックミラー」だった。ボソボソと思いを吐露するA~Bメロから、サビでの感情の大爆発――感情をむき出しにして叫ぶように声を張り上げるさまは、非常に私の胸を締め付けた。しかし彼女はよく比較されがちな椎名林檎(本人もアルバム『魔法が使えないなら死にたい』で『勝訴ストリップ』のジャケットをオマージュしている)とはどこかベクトルが違う気がする。彼女の日常を切り取ったさり気ない歌詞に感情を絡ませて説得力を持たせる手法、そしてよく聴くと実はキャッチーなメロディといった作風は、どちらかと言えばかつての大塚愛やaikoのそれを思わせる。それゆえ私は、大森靖子は大塚愛やaikoからオブラートを剥ぎとったような存在だと勝手に思っている。そう考えれば、彼女がavexに所属しているという摩訶不思議な肩書きにも納得が行く。どこからも浮いていて、それでいてどこまでもメジャーな存在であるからこそ、彼女の音楽は私の胸にこんなにも唯一無二に響いているのだろう。
 さて、男性バンド界は今、いわゆるサブカルバンドでごった返していると思う。それでも彼らひとりひとりにたいして興味がないうちは、すべてが同じ音に聞こえる。そして彼らひとりひとりの違いを聴き取ってそれぞれの個性を理解し、それぞれのファンになろうという気力も体力も、二十代後半を迎えた今は消え失せてしまった。そんな私にとって安心して聴いていられるバンドはBUMP OF CHICKENであり、フジファブリックであり、そしてこのGalileo Galileiである。温かみのあるヴォーカルの安心感、それでいて常に水面下で実験を繰り返しているような、そういうところが彼らの共通点であると思う。今年、BUMP OF CHICKENは名曲「Hello, world!」を発表した。サビで暗闇のなかをがむしゃらに突っ走っている聴き手の目の前の世界がサビの後半で一気に明るく広がっていく展開はとても胸が熱くなるし、そしてそれは到底計算されたものではなく、間違いなく魂の叫びである。また、フジファブリックは今年EP『BOYS』『GIRLS』を発表し、改めてその引き出しの多さでこちらをあっと驚かせてくれた。そんななかGalileo Galileiがノミネートされた理由は、ひとえにギターが泣いているからである。私は歌声が泣いている曲が好きだし、そういう曲はたくさん存在しているが、ギターがこんなにも泣いている曲にはなかなか出会えない。何もギターが悲しく湿った音を出しているというわけではなくて、ポップでキャッチーなメロディなのに、だからこそ無性に泣けてくるのだ。楽器のタメ方も素晴らしいし、流石は長年温められていた曲だけあって、初聴であるはずなのに、どこか懐かしさを覚えた第一印象だったことを強く覚えている。それくらい、この曲は今年の私にとって特別な存在だった。今年は他にもコンテンポラリー・ポップのような佇まいのノスタルジックな泣きのミッド「嵐のあとで」、打って変わって初期衝動を感じさせる痛快ロック「クライマー」を発表し、来年早々4thアルバム『Sea and The Darkness』を控えている。Fleetwood MacからKaty Perryや5 Seconds Of Summerまで、さまざまな音楽を追求し、自分たちなりに昇華していく彼らへの熱は、まだまだとどまることを知らない。
 さて、私にとってロックが泣きなら、ダンスは衝動だ。実際、泣くことよりも衝動にかられて動くことが多い私のiTunesの再生回数(惜しくも今月HDDごとご逝去なさった)の比率は、ロック1:ダンス3といった感じだった。そういった意味で、聴き手の胸を否応なしに熱くさせる赤色のビートが畳み掛ける中森明菜の「Rojo -Tierra-」は、まさに野生の営みそのものだった。そんなトラックの上に、女神を招く歌姫の凛とした歌声が妖艶に響くとなると、長尺もあっという間。飽きることはおろか、ただただ圧倒されたまま終わってしまう。もはや大御所である中森明菜がこんな攻めたEDMを歌っていることにまず大きな意味があるし、そこは中田ヤスタカとコラボした「惑星になりたい」が印象的だったライバル松田聖子とも共通している姿勢で、80年代アイドルの嗅覚の良さを改めて実感する。シリアスなR&Bミッド「unfixable」を経て、果たして今年末に発売される久方ぶりのアルバム『FIXER』では、どれだけ私を圧倒してくれるのだろうか。今から期待で打ち震えている。しかし、中森明菜はこの曲で踊ってほしいわけではなく《温かい気持ちを届けたい》とのことだった。また、松田聖子もこの曲で踊ってほしいと言うよりは、《この曲で可憐に舞う私を見て》と、まさに永遠のアイドルに相応しいアピールをしている気がする。そんななか、聴き手に《BitchのVogueは儚いの、だったらはじけてたいじゃない?》と挑発的に問いかけ、聴き手をジメジメした夏の日照りに誘うJUJUの「PLAYBACK」は革命だった。バラードの印象が強い彼女が《この曲を歌うためにこれまで歌手をやってきた感じ》と発言したように、この曲は彼女にとっても大きな挑戦だったと思うし、聴き手も強い衝撃を受けた。そしてそれが大成功を遂げたのは、この曲がどこまでも挑発的で、扇動的で、聴き手の身体に脈打つビート・グルーヴ・ヴァイブスを刺激したから。そして山口百恵の名曲「プレイバックPart 2」を連想させるタイトルで、彼女を今でも愛している層を狙い撃ちしたからである。スウィングしなけりゃ意味ないよ、というジャズの名曲があるが、それと同じように、ダンスであるならばダンスができなきゃ意味がない。自身が大胆なイメチェンを図ることで聴き手を驚かせ、そして聴き手の心と身体をも大胆にさせ、踊らせたJUJU。文句ナシに、受賞は彼女である。
 

English Single Of The Year


・Demi Lovato「Cool For The Summer
・Madonna「Living For Love
・Mariah Carey「Infinity
・Rihanna「Bitch Better Have My Money

 読者による受賞予想はコチラ。

 受賞したのは



Madonna「Living For Love」


 アンセムって、要はスタンダード。

 今年のディズニー御三家は、とても面白かった。Miley Cyrusは自らに求められているダーティーな路線を極めれば行き着く先はやはりそこかと言ったところのゲテモノ路線に振り切ったし、Selena GomezはPBR&B調のトラックにウィスパーボイスを乗せるミス・セクシーとなった。そして、Demi Lovatoは今年、全世界を踊らせるダンス・ディーヴァとなった。この「Cool For The Summer」はJUJUの「PLAYBACK」と対を成すサマー・アンセムだと思うし、ロッキッシュでダンサブルでカッコいいのにどこかダサいという絶妙さが本当に最高で、私も頭を振り回して踊り狂ったものだ。欲を言えば、アルバムも終始このノリが良かった。
 また、今年全米No.1ヒット曲だけを集めたベスト・アルバム『#1 To Infinity』をリリースしたMariah Careyは、そのアルバムのテーマ曲といったところの新曲「Infinity」を発表し、最初の1秒から最後の1秒までマライアらしさが凝縮されたその内容に、私は歓喜した。それでも不死鳥だと思われていたマライアもやはりは人間で、どんどん声から水分が抜けていくような感覚を、とても切なく思う曲でもあった。マライアはマライア。マライアの声は永遠ではないけれど、マライアの曲は永遠。そんなシンプルかつ真理を突いたテーマを勝手に感じて、それをベスト・アルバムのタイトル曲にするセンスを讃え、私は今回彼女をノミネートした。
 そして発売が待たれるアルバム『ANTI』から放たれ、そのMVがさまざまな問題提起となったRihannaの「Bitch Better Have My Money」も、今年の音楽を語るうえでは外せない存在だと思う。当初こそKanye Westのカラオケと揶揄されたものだが、ビッチ・キャラのRihannaがこんなにも挑発的で攻撃的で過激な歌詞を、こんなにも凶暴なトラックに乗せてまるでラップのようにフロウするサマは、まさにロック、まさに『ANTI』である。そういったテーマに即した曲、ヴィジュアルで攻めた彼女の姿勢に感銘を受け、今回のノミネートに至った。個人的に『ANTI』は『Rated R』に続くダークな傑作になりそうで、発売を心から楽しみにしている。
 さて、そんなRihannaさえ吹き飛ばしたのが、今年アルバム『Rebel Heart』を発表した絶対女王Madonnaの「Living For Love」である。正直言って、今年はこの曲を超える曲に出会えず終わってしまった。否、この曲を出した時点で、彼女の勝ち逃げは決まっていた。何故なら答えは簡単、まずは《アンゴナキャリオンッ!》なる一度聴いたら決して忘れることの出来ないキャッチーなフレーズを生み出したという、ポップ・ミュージックにおいて最も重要なことを成し遂げているから。そしてもうひとつは、彼女がこの世界の"Iconic"な存在だからである。この曲の肝は、《私を天国に連れて行き、突き落とした/すべてが終わって、前に進むわ》というサビにすべて込められている。この曲は、単なるラブソングにはとどまらない。人生の賛歌、そして愛の賛歌である。だからこそゴスペルクワイアが歌っているし、だからこそソウルフルでエモーショナルなピアノをAlicia Keysが弾いている。かつて松任谷由実は久保田利伸をコーラスに迎えた際「ええ、彼には楽器として参加してもらいました」という名言を放ったが、Madonnaの場合、文字通りAlicia Keysという一流に「楽器として参加して」もらっている。この曲のピアノは一流による演奏でなければ成り立たないと言っても過言ではない。何故なら、この曲には魂が宿っている。それは、人生におけるすべてのことが、この曲の歌詞で表現できるからだ。誰しも幸せを味わい、どん底を味わい、それでも前へ進む。それがどんな種類の幸せ・不幸せであっても、結局は人は愛で生きていて、前へ進む他ない。そんな普遍性が、この曲には確かにある。前へ進んだその最果てが死であり、だからこそこの曲はどこかレクイエムのようにも響くのであろう。人生賛歌で、レクイエムで、かつそのあいだにある小さな区切りのことにも当てはめられる普遍性。そしてそれを我先に歌うことで、他の追随を許さない嗅覚の良さ。それが彼女がいまだに絶対女王たる所以であろう。つまり、人生のすべてを歌ったこの曲を今回のノミネートのなかで最も早く発表した彼女こそが、有無を言わさぬ受賞である。


 15/12/23


 伝説の音楽誌『#BitchVogue』の編集長ユズ子ことゆずひめが、その年に最も輝いた作品にグラミー賞ならぬユズ子賞を贈呈する年末企画――その名も『#BitchVogue Awards 2015』が本日より開催されます。最初で最後となる今年は全7部門。以下にノミネートされた作品・アーティストを紹介いたします。


Japanese Single Of The Year


・大森靖子「マジックミラー
・Galileo Galilei「恋の寿命
・JUJU「PLAYBACK
・中森明菜「Rojo -Tierra-


English Single Of The Year


・Demi Lovato「Cool For The Summer
・Madonna「Living For Love
・Mariah Carey「Infinity
・Rihanna「Bitch Better Have My Money


Japanese Album Of The Year


・安室奈美恵『_genic』
・大塚愛『LOVE TRiCKY』
・大森靖子『洗脳』
・藤井隆『Coffee Bar Cowboy』


English Album Of The Year


・Carly Rae Jepsen『E・MO・TION』
・Ellie Goulding『Delirium』
・Janet Jackson『Unbreakable』
・The Weeknd『Beauty Behind The Madness』


Madness Of The Year


・Bonnie McKee「Bombastic
・Demi Lovato「Confident
・J Sutta「Feliine Resurrection
・MAX「#SELFIE -ONNA Now-


Japanese Artist Of The Year


・安室奈美恵
・大森靖子
・椎名林檎
・JUJU


English Artist Of The Year


・Janet Jackson
・Madonna
・The Weeknd
・Years & Years


 以上のノミネートのなかからどの作品・アーティストが受賞するかを予想していただく読者参加型のアンケートを、本日よりTwitterにて毎日執り行いますので、是非ふるってご参加ください。また、受賞の発表はそれぞれ下記の日程で行います。

 12/23:Single Of The Year
 12/25:Album Of The Year
 12/27:Madness Of The Year
 12/29:Artist Of The Year
 12/31:総括


 それでは伝説の音楽誌『#BitchVogue』の編集長ユズ子が贈る当ブログ最初で最後の大型企画、何卒最後までお楽しみくださいませ。


 15/12/21
 #ゆずひめ生誕祭2015

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