2012年06月 Intoxicated Lotus
FC2ブログ


 逆光で、貴方が視えない――。

01. Under The Sun
02. Call My Name
03. Craziest Things feat. will.i.am
04. Girl In The Mirror
05. A Million Lights
06. Screw You feat. Wretch 32
07. Love Killer
08. Ghetto Baby
09. Sexy Den A Mutha
10. Mechanics Of The Heart
11. All Is Fair


 2013年に惜しくも解散したイギリスのガールズグループGirls Aloudのメンバー、Cheryl。その人気を言い表すならイギリスのBritney Spearsといったところではないだろうか。そんな彼女のソロ3作目となる『A Million Lights』は、元旦那の姓Coleを取り払ったCherylに名前を一新した、気合い満点かつダークな仕上がりになっている。1stアルバム『3 Words』はアメリカのHip-HopグループThe Black Eyed Peasのブレイン的存在will.i.amが大きく関与しアーティスティックな仕上がりになっていたが、2ndアルバム『Messy Little Raindrops』はさまざまなポップに手を出していて、どこか散漫な印象があった。その試行錯誤を経て放たれた本作に、迷いはひとつもなかった。

 先行シングルM2「Call My Name」は同郷イギリスの大人気DJ兼プロデューサーCalvin Harrisを起用したアゲアゲな曲で、アルバムへのモチヴェーションはすでにエクストリーム。後出しジャンケンながらも、同じくCalvin Harrisを起用したRihannaの「We Found Love」に負けないギラつきぶりである。
 アルバムは2ndシングルとしてカットされたM1「Under The Sun」で始まる。横揺れのハートウォーミングな曲調で、日差しやアスファルトの匂いを感じる土臭いミッド・チューンである。相性の良さは確認済みのwill.i.amを客演に迎えたM3「Craziest Things」ではダブステップを取り入れ、フックの放送禁止用語を効果的に作用させている。続くM4「Girl In The Mirror」はアップテンポながらダークな雰囲気。本曲でもダブステップを取り入れており、この辺りで聴き手は気づくはずだ。本作はM2「Call My Name」の路線ではなく、全編にダブステップを配したダークなアルバムなのだと。それを決定づけるのが、表題曲であるM5「A Million Lights」である。陰鬱で危うい脆さが見え隠れするバラードで、この曲にもダブステップが使われている。パワフルなトラックに頼りないヴォーカルが乗ることで、絶妙な危うさや脆さが表現されている。この曲に近いテイストの曲を挙げるならば、Utadaの「This One (Crying Like A Child)」だろうか。
 ここでアップテンポの曲がくる。イギリスのラッパーWretch 32を客演に迎えたM6「Screw You」だ。本作中最速のテンポで、放送禁止用語を放つフックに向けて急き立てられる。続いてM7「Love Killer」は地べたを這うかのようなダブステップ曲。フックのメロディが頭から離れなくなること必至なキャッチーさである。続くM8「Ghetto Baby」はアメリカの新鋭シンガーソングライターLana Del Reyが作曲に関与している。ファルセットが妖しい生々しい曲である。まさに梅雨といった感じで、ウェットでロウな雰囲気が聴き手の身体まで濡らしてしまう。
 生々しさのあとはそれを払拭するかのようなリフレイン曲M9「Sexy Den A Mutha」の登場である。M7「Love Killer」以上にフックが頭から離れなくなること必至である。フックまでの高まり方が堪らない。続くM10「Mechanics Of The Heart」は本作の救いのような曲で、サビが非常に晴れやか(とは言っても梅雨の時期のそれと同じで、どこか仄暗い)である。本曲にはイギリスの人気アーティストTaio Cruzが作曲で参加している。キャッチーな曲を歌う人なので、本曲も本作一キャッチーな仕上がりになっている。反して、最後は雷が鳴る真っ暗な空の下、重罪の裁きが行われるかのような本作一の暗さを持つM11「All Is Fair」で幕を閉じる。「All is fair. We don't care」という意味深な歌詞も印象的で、荘厳な雰囲気のなか再生は止まる。

 以上、11曲というコンパクトさながら、非常に濃厚な世界観である。そもそもタイトルに掲げられた『A Million Lights』は彼女が欲するものであって、彼女を表すものではない。それは表題曲M5「A Million Lights」で「A million lights behind you. I'm a little too much in the dark, here without you」と歌われている。つまりこのアルバム全編を通したダークさは、彼女が今置かれている環境なのである。歌詞から想像しても、元旦那に向けたアルバムのように思える。離婚後発表された2ndアルバム『Messy Little Raindrops』に収録されている「Happy Tears」(名曲)だけでは語り切れなかったのだろうか……しかし、もしこの憶測が当たっているのならば、彼女は元旦那の心が視えなくなって離婚したのではないだろうか。だからこそ意味深な歌詞が多いのではないだろうか。だからこそ敢えて芸名から姓を取り払ったのではないだろうか、すべてはあてつけのように……何故なら"百万もの光"は彼の後ろにあって、つまり彼女には彼の顔は逆光と眩しさでまったく見えないのだから――。
 ……とまあ、憶測を語ったところでそれは彼女の計算かもしれないし、元旦那にあてつけるためにアルバムを作るほどの復讐心と執着心があるようには思えない。恐らくは筆者の昼ドラの観過ぎであろう。何も考えなければ、迷いのないダブステップで統一された、非常に完成度の高いアルバムだということだ。それこそ、"百万もの光"を浴びるだけの内容を伴った作品である。M2「Call My Name」が少々浮いているようにも感じるが、それは先行シングルならではの輝きだということで片付けておこう。Girls Aloudが解散した今、彼女と他メンバーの今後に期待したい。


 13/07/22

| main |